軍事力が外交の最後の切り札であるとすれば、圧倒的に有力な軍事力のあるアメリカに対して、日本が「対等の同盟」関係をつくるのは望むべくもないことである。それができる方法があるとすれば、いわゆるソフト・パワーによってハード・パワーに対抗するしかないであろう。日米同盟における最大の懸案は沖縄の基地問題である。鳩山首相の祖父一郎は、初代の自由民主党総裁に選ばれ、首相に就任すると、吉田茂前首相の対米従属外交に対する世論の反感を背後に、ソ連を訪問して国交回復と領土問題の解決を実現し、それによって対等な日米関係をつくろうとした。しかし当時の国務長官ダレスは、日本がソ連に接近すれば沖縄の本土復帰はあり得ないとして、その方向にくぎをさした。沖縄は、日本領土の中でただ一つ戦場になったことから、戦後もアメリカの占領状態におかれ、日本の独立後もアメリカ軍の沖縄基地は日米安保条約で継承された。冷戦終結後は、ドイツや韓国ではアメリカ軍の地位協定の見直しがあったが、1990年代の日本政府は、アメリカ軍の再編、いわゆるトランスフォーメーションに対応して事態を改善するのを怠った。沖縄県民は基地の国外ないし圏外への移転を望んでおり、この意向に対する民主的な対応が果たして可能かどうかが試されている。