政治支配が成立するには、権力と権威、支配のための実力と国民の支持を集めるための正統性が必要である。自由・民主主義の体制では、支配の正統性は国民主権の下、政府が国民に選ばれていることにあるが、権威主義は国民主権を正面から否定はしないものの、伝統的な権威に対する信従や、指導者に対する個人崇拝を利用し、言論統制と警察力によって長期の政権を築く。第二次世界大戦期の日本は、国民を下から動員していく全体主義というよりもむしろ、天皇という伝統的権威の下に「翼賛」する「上意下達」の権威主義の体制であった。第二次大戦後に独立した新興国家や、ソビエト連邦崩壊後に独立した旧ソ連加盟の国家、近くはアラブの春の中で生まれた政権は、多くが権威主義の道を選んだ。1949年の中国革命で成立した共産党政権は、毛沢東の独裁の下、大躍進政策と文化大革命の全体主義的な大衆動員をかけたが、それ以後は保守化して権威主義に移行している。民主主義を安定させるには、民主的な親と教師に育てられた民主的な人格(パーソナリティー)が必要であるとして、反権威主義的な育て方や教育が強調されることもある。