2008年のリーマン・ショックをきっかけに、世界各国政府のうち続く失敗(→「政府の失敗」)に業を煮やしたのか、中間層の反乱とでも呼ぶべき現象が生じている。かつては中間層は社会の安定勢力と思われていたのが、今では不安定要因となったようである。またかつては政府の失敗は政治の左傾をもたらしたのに対して、今では極右の台頭を引き起こしている。「第二次大戦終結以後、最大の政府危機」と評する新聞論調も世界的規模であらわれている。
アメリカでは、共和党右派の茶会派が進出し、小さな政府、財政の縮小を求めている。13年末には連邦政府を閉店状態に追い込んだ。共和党の支持率は低下し、12年のオバマ大統領再選、共和党上院議席の縮小で上下議院の「ねじれ」をもたらした。しかし茶会派の選挙地盤は固いから、14年の中間選挙、16年大統領選の共和党大統領候補の指名でもひと波乱を起こすであろう。
アメリカでは、右翼反乱分子は、共和党という二大政党の一極に位置しているのに対して、ヨーロッパではユーロ通貨危機、財政縮小に反発し、EU(欧州連合)脱退、移民の流入反対、イスラム教徒排斥を唱える極右小政党の進出が目立つ。14年5月にはEU加盟28カ国でユーロ議員選挙が行われる。フランスでは右翼の国民戦線の票の伸びが予想されている。学生の中では50%の支持を得ているという世論調査もある。イギリスのイギリス独立党の脅威に対して、保守党キャメロン政権はEU加盟存続か否かを問う国民投票を迫られている。オランダの自由党も進出するであろう。右翼、左翼のEU反対勢力は議席の16~25%をとると予想されているが、右翼と極右派がそのうちの9%を占めるであろう。政権の主流派が恐れているのは、左翼よりも右翼である。
アジアでは、選挙ボイコットの波が広がっている。タイでは、この国で一番古い政党の民主党がボイコットを唱えている。タイの伝統的なエリート層は、国の北部や東北部に根を下ろしたタクシン派に選挙では勝てないと判断しているからである。バングラディシュでは野党の国民党は選挙をボイコットして、与党アワミ連盟を楽勝させた。ネパールでは13年11月の制憲議会選挙を33政党がボイコットしている。カンボジアとマレーシアの野党は、13年総選挙に参加したが、選挙での敗北を認めていない。
さて日本では、安倍晋三第2次政権の成立そのものが、先の民主党政権に対する中間層の反乱の結果であった。野党は分散、孤立を続けているが、大震災の被害地域と沖縄での地方選挙、そして脱原発を巡る東京都知事選挙が政局の波乱を予想させた。