政治倫理の意味は、欧米では政治家の地位を私的な利益の実現に用いないことと比較的限定的に用いられているが、日本の政治倫理は、当初は刑事事件や懲罰で責任を追及できない疑惑等の政治責任の追及手段として機能し、さらに近年は国民の要求水準の高まりと、政権交代をかけた与野党の対決の激化に伴い、刑事事件を超えた広範な責任追及と攻撃の手段となっている。日本でこの言葉が用いられるようになったのは、1976年のロッキード事件の際で、その制度化として85年に衆参の議決で政治倫理綱領と行為規範が定められ、また衆参に政治倫理審査会が設けられた。政治倫理審査会は衆議院(衆院)では25人、参議院(参院)では15人で組織され、委員の3分の1以上が申し立てて委員の過半数が賛成した場合、または不当な疑惑を受けたとする議員が申し出た場合に審査を行い、3分の2以上の多数で、(1)行為規範等の遵守の勧告、(2)一定期間の登院自粛の勧告、(3)議院の役員等の辞任の勧告ができる。衆院でこれまで8回開かれたが、いずれも開かれたのは本人の申し出による場合である。2009年鳩山由紀夫民主党代表の個人献金偽装問題では、委員の過半数の賛成で開催を議決したが、強制力がないため鳩山代表は出席せず、審査は行われなかった。また10年に小沢一郎元民主党代表の政治資金収支報告書の虚偽記載問題では、検察の不起訴処分に対して検察審査会が2度の起訴相当議決を行って強制起訴が決まったのを受けて、民主党執行部は小沢氏本人に政治倫理審査会で国民に向けて説明させることを試みたが、小沢氏が忌避し、野党も偽証罪が適用される証人喚問とすべきと主張して実現しなかった。政治倫理を補完するものとして、00年には議員や秘書が公務員に口利きした見返りに報酬を受けることを禁ずるあっせん利得処罰法が制定され、02年には対象が私設秘書にまで拡大された。