現代民主主義国では、一般に普通平等選挙の原則が確立しているが、有権者の投票参加の度合い(投票率)は、国や時代や性別や地域によってかなり違う。国別で見ると、日本の場合、1996年衆議院議員総選挙での投票率は、総選挙史上最低の59.6%であったが、第二次大戦後の24回の総選挙での平均投票率は、70.5%である。また、95年参議院議員通常選挙での投票率は44.5%で、日本国政選挙史上最低であったが、98年参院通常選挙での投票率は、やや持ち直して58.8%であった。他方、アメリカの最近の大統領選挙の投票率は50%と55%の間であったが、96年大統領選では、49%に落ち込んだ。これに対してオーストラリアでは、25年以降の連邦選挙で投票率が90%を下回ったことがない。また、日本の場合、地域別では、2004年参院選と05年総選挙を比べてみると、東京都でそれぞれ56.1%、65.6%、島根県でそれぞれ68.9%、75.8%であったことに端的に示されているように、投票率は、都市型選挙区で低く農村型選挙区で高い。男女別では、総選挙では1969年から、参院通常選挙では68年から(95年と2004年を除く)、女性有権者の投票率が男性有権者の投票率を上回っている。このような投票率の差異は、選挙制度、社会構造、政治的関心度などと関連しているとみられる。たとえばオーストラリアの高投票率は、かなりの程度において義務投票制の結果であり、アメリカの投票率は、有権者本人の申告によって選挙人名簿に登録される申告登録制を採っていることと無関係ではない(登録率は現在約70%)。また、都市の有権者の高い移動率は、投票参加に対して一般にマイナスに作用し、さらに今日の大衆デモクラシー(大衆民主主義)状況のもとでは、有権者、とりわけ都市の有権者の政治的関心の低下は避けがたく、投票率の下降を導く原因となっている。