予算編成は重要な政策決定過程である。予算がつくということは、各府省が次年度に実行する施策の計画、調整、優先順位を確立することを意味する。自公政権下では、例年、6月半ば、経済財政諮問会議の審議に基づき、マクロ経済政策や財政運営の基本方針(「骨太の方針」)を内閣が決定、7月上旬に概算要求基準(シーリング)を定め、各府省が概算要求を準備、内閣が「予算編成の基本方針」を決定し、財務省が主計局を中心に概算要求の査定に当たり、財務省が原案を内示、復活折衝を経て、政府案が決定された。
2009年9月16日発足した鳩山由紀夫連立内閣の下では、内閣府に置かれた経済財政諮問会議を休止し、予算編成の方針・骨格を定める国家戦略室を内閣官房に設置した。09年9月29日の閣議でシーリング(前年度比何%減)の撤廃などの基本方針を決定し、民主党のマニフェストに従って予算要求をするよう各府省に正式指示。10月23日には、国家戦略室の「予算のあり方についての検討会」(菅直人・国家戦略担当大臣ほかの政治家と学者のみで構成)による検討結果を踏まえ、「予算編成の在り方の改革について」を閣議決定。
改革骨子は、(1)複数年度を視野に入れた、トップダウン型の予算編成、(2)予算編成・執行のプロセスの抜本的な透明化・可視化、(3)年度末の使い切り等、無駄な予算執行を排除、(4)政策達成目標明示制度の導入で、予算編成の原理を転換しようとするもの。日本国憲法73条にある「予算を作成して国会に提出すること」は内閣の事務であること、予算編成権は財務省ではなく内閣にあることを示した。各府省の予算要求額が95兆円に膨れ上がったため、新設の行政刷新会議(議長は総理、副議長は仙谷由人行政刷新担当大臣)が、92兆円への圧縮を目指して、不要・不急の予算要求を洗い出す「事業仕分け」を09年11月11日から計9日間、国の約3000事業のうち約450の事業を対象に実施。ただし、削減額は6770億円にとどまった。そこで、マニフェストの主要政策に手を付けることを含め閣僚委員会等で調整し、12月15日に「予算編成の基本方針」を閣議決定し、大臣間折衝を経て、政府案を12月25日の閣議で決定、92.3兆円の内容を総理自身が記者会見で発表した。従来のような財務省による政府原案の取りまとめではなくなった。
しかし、10年度予算編成に関しては、菅直人首相は、10年7月27日に概算要求基準を閣議決定し、シーリングを事実上復活させた。新規国債発行額を10年度の44.3兆円以下に抑えるため、各省庁の予算を10年度の金額から一律1割削減を図って約2兆円の歳出削減を見込み、その内約1兆円を使って「元気な日本復活特別枠」を設定し、今後の日本の成長に貢献できるような産業、デフレ脱出に効果的な分野に投資していくとした。13年12月5日、政府は、経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)を開き、14年度予算編成の基本方針の原案を提示した。予算編成に当たっては、「聖域なく予算を抜本的に見直し、経済成長に資する施策に重点化を図る」と明記し、4兆円を上回る収支改善を図ることを盛り込んだ。