内閣に置かれている法律案などの審査に当たる国の行政機関。1885年に内閣制度の創設に伴い、内閣総理大臣の管理に属する機関として法制局が設置され、その長は法制局長官、次長は法制次長と呼ばれていた。法制局長官は、大日本帝国憲法下では内閣書記官長と並び閣僚に列した。1962年7月、法制局は、衆参両院に置かれている議院法制局と区別する意味もあって内閣法制局と改称、法制局長は内閣法制局長官に、法制次長は内閣法制次長へ改称された。内閣法制局は、政府提出の法案や政令案について、憲法や他の法令と矛盾がないか事前に審査する「審査事務」が主な仕事で、憲法や法令の解釈で政府統一見解を示すなどの「意見事務」もある。2010年度の職員定員は76人で、財務、法務、総務、経済産業、警察庁などの9省1庁からキャリア官僚が出向している。組織は、長官・内閣法制次長・長官秘書官、第1部、第2部、第3部、第4部、長官総務室に分かれ、各部には部長と内閣法制局参事官が配置され、第1部には憲法資料調査室が設置されている。各部の法律案等の審査実務は、各府省から出向の参事官(課長相当職)が、各府省所管課の総括補佐および文書課の法令審査官と相対で、他法律との抵触や文章・語句の体裁の観点から逐条審査し、必要な修正を行う。第1部は意見照会への回答、閣内統一見解、法制に関する質問主意書への回答を行う。「権力の侍従」とも「憲法の番人」ともいわれ、例えば自衛隊の合憲性など、政府の憲法解釈を行ってきた。最近ではテロ特措法の原案作成にかかわっているが、集団的自衛権の行使は認めない立場をとっている。内閣法制局の主任の大臣は内閣総理大臣であるが、局の長は内閣が任命する内閣法制局長官である。内閣法制局長官は同局参事官を経験した者の中から内閣が任命するが、第1部長→法制次長→長官が不文律のルートといわれる。待遇は特別職の職員の給与に関する法律では内閣官房副長官や副大臣、公正取引委員会委員長、宮内庁長官等と同等とされるが、これらの職とは違い認証官ではない。内閣法制局長官は、首班指名による組閣があるたびに、同一人が引き続き在任する場合でも、いったん依願免官の辞令が出て、その後に改めて新内閣で任命される慣例となっている。09年9月に発足した鳩山由紀夫政権は、内閣法制局長官を「政府特別補佐人」から削除し、国会での答弁を禁止し、行政刷新相が法令解釈担当相を兼務するとした。しかし12年1月20日、野田佳彦内閣は、内閣法制局長官の国会答弁の復活を閣議決定した。法令解釈の長い歴史を知る人としてふさわしいというのがその理由だが、消費増税をめぐって緊迫必至の国会乗り切りのための官僚頼みが鮮明になった。