民主党は2009年の衆議院選挙のマニフェストで、日本年金機構の前身である旧社会保険庁当時に年金保険料の未納が問題となったことから、歳入庁の創設を打ち出した。税金を集める国税庁と年金保険料を集める日本年金機構(旧社会保険庁)を統合し、税と保険料を一体徴収する案。12年4月13日、民主党作業チームの中間とりまとめ案では、税と社会保障の個人情報を一つにまとめる共通番号制度の利用開始に合わせ、発足を15年1月とし、関連法案の年内提出を目指すとしていた。組織のあり方としては、組織を再編せずに連携を強化する「連携強化型」、税・保険料の徴収業務を一元化する「徴収業務統合型」、給付業務を含めた全業務を統合する「全業務統合型」の3類型を提示し検討するとしていた。民主党政府の消費増税等抜本改革法案では、「歳入庁の創設による税と社会保険料を徴収する体制の構築について本格的な作業を進めること」と明記されていた。政府は6月12日、「歳入庁」を18年以降速やかに創設するとの工程表を公表し、歳入庁創設前に、まず、マイナンバー制度導入予定の15年ごろに日本年金機構の業務のうち国民年金保険料の強制徴収業務を、システム統合を伴わない範囲で国税庁に統合するとした。また国税と年金の全業務を統合する「歳入・給付庁」については、将来の検討課題とした。消費増税関連法案に関する民主、自民、公明3党との修正協議によって消費税率を14年4月に8%、15年10月に10%に引き上げる案で合意した(12年6月15日)。一方、自民党は歳入庁創設について政府原案からの削除を要求し、3党の合意では「歳入庁その他の方策の有効性、課題などを幅広い観点から検討し、実施」とあいまいな表現に修正された。この修正のポイントは、「歳入庁その他の方策」の表現にある。官庁用語の典型例で「歳入庁その他の方策」と書かれ、「歳入庁その他方策」とは書かれていない。「歳入庁その他方策」であれば、少なくとも歳入庁そのものを検討しなければならないが、「歳入庁その他の方策」ならば、歳入庁は例示の一つになり、検討しなければならないわけではなくなる。自民党の政権復帰で歳入庁設置の可能性は遠のいた。