2008年成立の国家公務員制度改革基本法では従来の国家1種・2種・3種、その他(国税専門官等12種類)の試験を11年度で廃止し、12年度から新たに「総合職」「一般職」「専門職」「経験者」の区分による採用試験を導入するものとされていた。これによって12年度の採用試験が行われた。総合職の導入は、1種試験の合格者がほぼ自動的に幹部に昇任する「キャリア制度」(→「キャリア組/ノンキャリア組」)の廃止に伴うもので、「政策の企画立案に係る高い能力」を試す試験とされている。幹部候補の育成については、幹部候補育成課程を設け、課程対象者の選定については、採用後、一定期間の勤務経験を経た職員の中から、本人の希望および人事評価に基づいて随時行うものとされている。新しい試験制度では、おおむね、従来の1種試験が総合職試験に、2種試験および国家3種試験が一般職試験に再編された。従来の国税専門官採用試験や労働基準監督官採用試験などは新たに専門職試験として実施。一般職が事務処理などの定型的な業務を担当する一般職員として採用されるのに対して、総合職は将来の幹部候補生として政策の企画・立案など重要なポストに就く人材として採用されるという意味では、いわゆるキャリア制度の法制化ともいえる。一般職試験は高卒程度~大卒程度の人を、総合職試験では大卒程度~大学院卒の人を対象とし、総合職試験では一般職試験にはない「政策論文試験」や「政策課題討議試験」が出題されるなど試験内容にも違いがあり、総合職試験の方が一般職試験に比べて高いレベルの知識・思考力が必要とされている。一般職については、採用予定がある場合には社会人試験も実施され、内容はおおむね高卒者試験と同様。新たな人材供給源に対応した区分として、(1)総合職試験に専門職大学院を含む大学院修了者を対象とした院卒者試験と、(2)院卒者試験に新司法試験合格者を対象として「法務区分」が設けられ、多様な人材の確保に資するものとして、(1)総合職試験に企画立案に係る基礎的な能力の検証を重視した「教養区分」、(2)一般職試験に「社会人試験(係長級)」、(3)専門職試験に現行の各種試験に加え、新たな専門的な職種を対象とした採用試験、(4)民間企業等経験を有する者を係長以上の職に採用するため「経験者採用試験」を設けた。大卒程度試験では、大学卒業後に採用されることを前提に、20歳の者も受験できる「教養区分」(秋実施)が新設された。12年度合格者は、総合職(院卒者試験)356(内女性79)人、「法務」区分35(6)人、総合職(大卒程度)1014(235)人、「教養」区分52(7)人、一般職(大卒程度)2893(793)人であった。