国家公務員法第102条は、一般職の国家公務員の政治的行為について、(1)職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない、(2)職員は、公選による公職の候補者となることができない、(3)職員は、政党その他の政治的団体の役員、政治的顧問、その他これらと同様な役割をもつ構成員となることができない、と定めている。人事院規則には17に及ぶ政治的行為が規定されている。その一つは「政党その他の政治的団体の機関誌たる新聞その他の刊行物を発行し、編集し、配布し又はこれらの行為を援助すること」を挙げている。休日に身分を明かさずに支持する政党のビラを郵便受けに配ったことで国家公務員法違反の罪に問われた2人の職員に関し、2012年12月7日、最高裁判所第二小法廷は、国家公務員の政治的活動に対する罰則規定自体の合憲性は認めつつも、国家公務員法で禁じられている「政治的行為」とは「公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが観念的なものにとどまらず、実質的に認められるもの」を指し、「それは公務員の地位、その職務の内容や権限、行為の性質、態様、目的、内容等を総合して判断するのが相当」という初判断を示した。その上で、2人のうち元社会保険事務所職員は、管理職的地位になく、職務に裁量の余地がない、政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められない、と無罪。元厚生労働省課長補佐は、課内の総合調整を行う管理職で、多数の職員の職務遂行に影響を及ぼす地位にあった、政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる、と有罪とした。この最高裁判決は政治的行為に対する明確な基準を示したわけではなく、禁止される政治的行為かどうかは、地位や権限、行為内容を総合判断するという見解であり、あいまいさが残っている。しかし、公務員の政治的行為の制限を「必要やむを得ない限度にとどめる」としたことの意義は小さくない。