2014年度の地方財政対策では、この間に地方財源不足を補てんするためにとられてきた地方交付税の「歳出特別枠」と「別枠加算」を廃止するかどうかが焦点となった。財務省の所管する「財政制度等審議会」の12年5月の答申では、「また地方財政計画における歳出特別枠(13年度1兆4950億円)や地方交付税の別枠加算(13年度9900億円)は、リーマン・ショック(08年9月15日)に伴う著しい景気後退等を受け、実需に基づく積算を伴わない異例の対応として実施されたものである。国の一般会計においては、同じ背景の下で設けられた経済危機対応・地域活性化予備費を平成25年度予算で廃止しており、地方財政においても平時の対応に戻すべく、歳出特別枠や別枠加算の解消を図る必要がある」と指摘されていた。
この地方財政計画の「歳出特別枠」は、リーマン・ショックに先立ち08年度に「地方再生対策費」4000億円として導入されたものである。このときの財源は、地方の法人事業税の一部を国税とした地方法人特別税の創設に伴い、「地方交付税の算定を通じて、市町村、特に財政状況の厳しい地域に重点的に配分する」とされていた。また翌年度には、この「地域再生対策費」に「地域雇用創出推進費」5000億円が加わり、計9000億円とされた。その後、名目は変遷するが、13年度の「地域経済基盤強化・雇用等対策費」1兆4950億円として継続してきたもの。また、地方交付税の「別枠加算」はリーマン・ショックの影響が深刻になった11年度から実施されている。11年度は1兆円だったが、13年度は(財源不足の状況を踏まえた加算)として9900億円が地方交付税として増額されている。財務省と総務省との折衝の結果、14年度の「歳出特別枠」については、「地域の元気創造事業」への切り替え分を合わせてほぼ前年並みにおさまり、「別枠加算」についてはほぼ4割の削減となった。
これらは、基本的には「地方財源不足」を補てんするための「臨時的な措置」であった。考えなければならないのは、これら臨時的措置は、財務省サイドからは実需がないというが、地域には雇用対策や新エネルギー対策、老朽化する社会資本の維持管理施策、生活保護受給者の就労と生活支援に向けたパーソナルサポーター事業、地域での起業支援や空き家対策など人口減少地域対策といった、喫緊の「実需」がある。しかしこれらの新規事業に対しては、それに充てるべき新規財源は用意されていない。これら事業への財源を自治体レベルで単独事業としてひねり出すのは限界がある。これらを臨時的措置としてどうにかカバーしてきたのが、「特別枠」や「別枠加算」だったと言える。
つまり、人々の生活を支えるのが財政の機能の一つだとしたら、現状はきわめてひずんだ構造となっているといってよい。その根っこは、減少する税収の一方で、地域の財政需要が着実に拡大しているところにある。したがって、歳出特別枠や別枠加算を通常の交付税枠に収めることが必要なのである。別枠加算を削ったりすることは地域経済を破壊することにしかならず、経済活動自体を収縮させることでしかない。地方財政は人口減少時代に対応し、増大する財政需要をきちんとカバーできる制度として、再構築することが求められている。