政府開発援助(ODA)が日本外交の重要な手段の一つであることについて日本国内に異論は少ない。しかし、その政策決定や実施機関のあり方については、常に議論の的となってきた。2005年後半には、行政改革の一環としての八つの政府系金融機関の統廃合問題が起こり、その一つの国際協力銀行(JBIC)のあり方の検討が進み、その過程でODA全体の機構改革が内閣として議論されるまでになった。国際協力銀行は、1999年10月1日に日本輸出入銀行と海外経済協力基金が統合して設立された銀行で、貿易金融や途上国に投資する企業への貸し付けなど、旧輸銀の行ってきた業務と、旧基金が行ってきた円借款を実施する業務の二つを行ってきた。統合後も実質的には二つの業務は、別々に実施されてきた。政府系金融機関のうち民営化できるものは民営化し、それ以外は一つに統合すべきだという小泉首相の意向のもと、問題となったのがこの国際協力銀行であった。円借款については、民営化にも統合にもなじまないため、ODA実施体制のあり方の変更ということになったのである。この問題の審議のため官房長官の諮問機関として設置された「海外経済協力に関する検討会」は、2006年2月28日に最終報告をまとめ、(1)海外経済協力の司令塔として内閣に「海外経済協力会議」を設置する、(2)国際協力銀行の国際金融部門は新たに発足する政府系金融機関に吸収し、円借款部門は国際協力機構(JICA)に統合する、との提案を行った。この提案によれば、新JICAは、これまでどおり外務省所管の独立行政法人として、無償資金協力、技術協力に加え円借款も担当することになるが、円借款部門については外務省、財務省、経産省の共管となり、新政府系金融機関に統合される国際協力銀行については、ある程度の独立性を与えるなどJBICのブランドを維持するための制度設計をするとされた。海外経済協力会議は、4月28日に閣議決定で設置されたが、国際協力機構や国際協力銀行などの実施機関の具体的な改革は、今後実施されることになる。(→「ODA大綱」)