2009年9月の民主党政権発足で、岡田克也外相は日米間に存在したとされる核密約問題の調査を外務省に命じ、その後、北岡伸一氏(東京大学教授)を座長とする6人の有識者委員会が発足した。調査対象は、(1)1960年の日米安全保障条約改定時の核「持ち込み」密約(地上への核「持ち込み」と核搭載艦船や同爆撃機の「立ち寄り」を区別し、後者を容認するもの)、(2)同じく朝鮮半島有事の際、在日米軍基地使用を確実に認める密約、(3)72年の沖縄返還をめぐって、有事に沖縄に核兵器を再導入することを認める密約、(4)同じく在沖縄米軍基地施設返還の原状回復補償費を日本政府が肩代わりする密約、である。(1)(2)(3)が核に関する密約である。いずれも、すでにアメリカ側で資料が発見されたり、当時の政府関係者の証言がなされたりしていた。最近では、日本の外務省関係者の中からも証言が出てきた。また、(3)については当時の佐藤栄作首相の密使を務めたとされる若泉敬氏(故人)が多くの回顧録を刊行している。2009年12月には、佐藤元首相の遺族が密約書類の存在を確認した。これまで外務省は、これらの密約の存在を否定してきた。有識者委員会によると、関連資料の多くが紛失しており、外務省の杜撰(ずさん)な管理体制も問題にされている。