北朝鮮は、2006年7月5日の早朝に6発、夕方に1発の弾道ミサイルを、日本海に向けて発射した。3発目は長距離弾道ミサイルのテポドン2号とみられ、その他はスカッドまたはノドンとみられる。テポドン2号の発射については、失敗と推定されている。北朝鮮がこの時期にミサイルの連射実験に踏み切った理由としては、米朝直接交渉をめざした対米示威行為、軍事技術上の必要性、国際的な武器市場への広告効果など、さまざまな分析がなされているが、いずれも明確ではない。日本政府は北朝鮮の万景峰号の国内入港の半年禁止など9項目の制裁を、直ちに決定した。06年版「防衛白書」も、「わが国の安全保障や国際社会の平和と安定、さらには大量破壊兵器の不拡散という観点から重大な問題であり、船舶・航空機の航行の安全に関する国際法上も問題がある」と指摘している。この事件を受けて、日本が地対空誘導弾パトリオット3(PAC3)の配備を早めるなど、日米のミサイル防衛計画は加速化されよう。また、日本では敵地攻撃能力の保有を唱える政治家らもあり、こうした議論を過剰反応と警戒する意見も内外にある。北朝鮮は金正日の死去後、金正恩の下でも、12年4月と12月にミサイル発射実験を断行した。