新中期防(2011年度~15年度)は、南西地域の防衛態勢を強化するために、(1)周辺海空域の安全確保、(2)情報収集・警戒監視態勢の整備等、(3)迅速な展開・対応能力の向上、(4)防空能力の向上、の必要を掲げた。このうち(2)の具体策の一つに挙げられたのが南西地域の島嶼(とうしょ)部への陸上自衛隊沿岸監視部隊の配備である。配備先として予定されたのが、台湾から110キロ、日本最西端に位置する沖縄県与那国町(与那国島)であった。2000年代末から、与那国町や町議会が尖閣諸島をめぐる周辺諸国との緊張の高まりを背景に、また大規模災害発生への対処や自衛隊配備による地域活性化、インフラ整備を期待して陸上自衛隊の部隊配備を要望していたこともあって、11年9月、防衛省は与那国島へ陸上自衛隊の沿岸監視部隊を配置することを決定した。13年6月には与那国町長と沖縄防衛局長との間で与那国島への陸上自衛隊の沿岸監視部隊配置等に係る与那国町誘致の停止条件付賃貸借契約が結ばれた。防衛省は15年度末までにレーダー施設を配置、沿岸監視部隊約150人規模を配備することを計画している。
しかし、島内には、自衛隊配備によって島が外国からの攻撃の標的になるおそれのあることや、レーダーの電磁波による健康障害の可能性などを理由に反対する住民は多かった。与那国町議会は14年11月、陸上自衛隊沿岸監視部隊配備の是非を問う住民投票条例案を可決し、15年2月22日に中学生以上の住民を対象に住民投票が実施された。賛成632票に対して反対は445票(投票率85.74%)。法的拘束力はないものの、陸上自衛隊の配備を後押しする結果となった。