議会制民主政治は、議会内に政権党を批判する政党を制度として抱え込む政治体制である。政権党の政治には誤りがあり得るし、そのような場合に、いつでもそれに代わる用意がある政党があることは、民主政治の発展にとり望ましい。イギリスでは野党第一党に対して積極的に「女王陛下の反対党」(Her Majesty's Opposition)という地位を与え、政府の政策に対して責任ある批判を行うことを期待し、そのために、その党首などには通常の議員報酬とは別に特別の報酬を支払っている。野党第一党の党首は政府の閣僚ポストに対応する政策分野を担当する議員を任命し、議会活動を行っている。この野党党首を中心に組織されるチームをシャドー・キャビネット、影の内閣(正式名称は、保守党ではLeader's Consultative Committee、労働党ではParliamentary Committee)という。
日本では、自民党政権下の1991年9月に、野党第一党の社会党が田辺誠委員長を統括委員長(首相)とする10人の「閣僚」からなる影の内閣を発足させたのが最初。民主党も99年9月に「ネクスト・キャビネット」(次の内閣)を発足させた。それは民主党の政策全般を検討、決定する機関として位置づけられていた。2007年9月に発足した第3次小沢「次の内閣」には、小沢一郎「ネクスト総理大臣」ほか、副総理、国務大臣、官房長官ほか、ネクスト総務大臣、ネクスト外務大臣、ネクスト防衛大臣、ネクスト内閣府担当大臣、ネクスト財務大臣、ネクスト金融担当大臣(経済財政担当)、ネクスト厚生労働大臣、ネクスト年金担当大臣、ネクスト経済産業大臣、ネクスト法務大臣、ネクスト文部科学大臣、ネクスト子ども・男女共同参画担当大臣、ネクスト農林水産大臣、ネクスト国土交通大臣、ネクスト環境大臣の15の「ネクスト大臣」が設けられ、「小沢総理」を含めて、合計20人が大臣に任命された。また、自民党は野党に転落した10年に政権力委員会(ネクスト・ジャパン)というシャドー・キャビネットを創設した。