職業的な法律家でない一般国民を裁判に参加させる制度を広く指す。その発祥地であるイギリスやアメリカでは、(a)正式起訴をするかどうかを決定する起訴陪審(大陪審)、(b)審理に立ち会い、裁判官から独立して評決を行う公判陪審(小陪審)の二つがある。陪審制度として話題になるのは小陪審で、大陪審は廃止される傾向にある。大革命後のフランスやドイツで採用されたこともあったが、その後は陪審制を廃止し、国民から選ばれた数人の参審員が職業裁判官とともに審理合議体を形づくる「参審制」を採用している。日本でも、かつて1923年に成立した陪審法(大正12年法律50号)によって陪審制度が採り入れられ、16年間行われたこともあったが、陪審法ノ停止ニ関スル法律(昭和18年法律88号)によって施行停止のままになっている。冤罪事件などを契機に陪審制の採用を望む声も上がったが、陪審制は司法権を裁判所に帰属させた憲法の趣旨に反するという意見もある。しかし、このような公判陪審の制度を採用しても問題がないことは、日本国憲法や裁判所法の制定に際して確認されており、「刑事について、別に法律で陪審の制度を設けることを妨げない」(裁判所法3条3項)という規定もある。