公務員の不法行為などにより損害を受けた者が、国や地方公共団体などを相手として起こす民事に関する訴訟のこと。日本国憲法は、「何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる」(17条)と定めて、国民の国家賠償請求権を保障している。これをうけて国家賠償法(昭和22年法律125号)は、「公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたとき」(1条)又は「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵(かし)があったために他人に損害を生じたとき」(2条)に、国又は公共団体がそれを賠償する責任があることを定めている。これに基づく訴訟が国家賠償訴訟と言われ、多くの国家賠償請求事件が裁判所に係属してきたが、それが認められるには、公務員の公務執行上の故意・過失や公の営造物の設置・管理に瑕疵があり、そのために国民が損害をこうむったことが必要である。そのため、国民は、例えば、警察官の行為に過失があったことや公立学校などの管理に落ち度があったことを裁判で立証しなくてはならない。なお、国家賠償法によるほかは、民法が適用されることになるが(国賠法4条)、公務員個人に対して賠償を求めることはできないと解されている。