外交使節には慣習法により、伝統的に特権や免除が認められてきた。根拠は代表としての任務の能率的な遂行のためで、ウィーン外交関係条約(→「外交関係」)にも明文化されている。使節団を対象として公館・公文書の不可侵、裁判・課税の免除などが認められる。さらに使節団の長や構成員及び家族に対して、身体・名誉・住居の不可侵のほか、裁判・課税の免除や通信・旅行の自由も保障される。従って領域国は法令を遵守(じゅんしゅ)しないと見なした者を処罰できず、ペルソナ・ノン・グラータとして召還を要求するしかない。特権免除は国家を代表しない領事や領事館についても、任務の遂行に必要な範囲内に限ってウィーン領事関係条約(→「領事関係」)に規定される。領域国は公館や公館員の安全に対する侵害防止義務を負うが、ほかに外交官等保護条約が締結され、テロの標的となりやすい大使館や外交官への犯罪を防止する。公館が不可侵であることから、2002年の瀋陽総領事館事件のように、亡命希望者や犯罪者が保護を求めて逃げ込む例が後を絶たない。国境を越えて領域内に居る者に対する庇護(ひご)権は国際法上確立しているが、他国領域における在外公館を通じての外交的庇護権は慣習法化していないため、領域国の官憲の立ち入りを認めるか、該当者を公館から立ち退かさなければならない。