人権の保護を目的として国家間で締結された国際条約だが、明確な定義はない。19世紀から奴隷取引や奴隷制度を禁止する条約が締結され始め、第一次世界大戦後には国際労働機関(ILO)で採択された国際労働条約や少数民族保護条約などの締結が増加した。しかし多様な人権条約の締結が本格化するのは国連の設立以降で、1948年の集団殺害(ジェノサイド)防止条約、51年難民条約(→「難民」)、53年婦人参政権条約と続いた。その後も国連人権委員会を中心的な起草機関として、65年人種差別撤廃条約、66年国際人権規約、79年女子差別撤廃条約、84年拷問禁止条約、89年には児童(子ども)の権利条約が国連総会で成立した。この時点で人権条約の締結は一段落したとされたが、21世紀初の人権条約として2006年に障害者の権利条約が成立している。このほかに地域的な人権条約として、50年欧州人権条約、69年米州人権条約、81年アフリカ人権(バンジュール)憲章がある。ほとんどの人権条約は実施措置として報告を締約国に義務付け、さらに締約国や個人からの通報を委員会(→「人権条約機関」)で処理する制度を設けて、条約の履行監視を実現したり、人権裁判所を設置する条約も見られる。