軍事力の行使により他国の主権・領土保全・政治的独立を脅かし、侵害する国家の行為。自然法に基づく国際法の時代には、正戦論が展開されて自衛などが戦争の正当事由とされた。しかし無差別戦争観が普及した後には、戦争を侵略と自衛に区別する意義は失われ、形式さえ守られていればいかなる戦争も合法と考えられた。20世紀に入り戦争が徐々に違法化されてくると再び区別が問題となり、1928年の不戦条約で放棄された戦争は侵略戦争のみで、自衛戦争は除外されるとの解釈が一般化した。戦争という用語を使用しなかった国連憲章では、加盟国の個別的・集団的自衛権(→「自衛権」)が認められるとともに、侵略行為の認定は安全保障理事会(安保理)の裁量の範囲内にあるとして、侵略や侵略行為は厳密に定義されないまま残された。50年の朝鮮戦争以後侵略の認定をめぐって定義が問題となり、74年に国連総会で侵略の定義に関する決議が採択された。決議は侵略の具体的な形態を列挙するが、そのほかの形態は安保理の裁量の問題とし、侵略を平和に対する犯罪として国際責任を生じるとした。侵略の罪を裁判対象として予定するICC(→「国際刑事裁判所」)では、設立規程(第5条2項)を改正して、早くとも7年後から当該犯罪に対して管轄権を行使することが合意された。