北極海を通航してアジアやアメリカとヨーロッパを結ぶ海路には北東航路と北西航路があるが、前者のベーリング海峡からシベリア沿岸を通りヨーロッパに至る航路。ロシアにより命名された。ちなみに、後者の北西航路はカナダの北部沿岸を横断する航路のこと。日本からヨーロッパへの航路には、マラッカ海峡からインド洋を通り、スエズ運河を抜ける南回り航路もある。しかし、南回りは北極海航路に比べ航行距離が倍以上であることや、中東情勢の不安定化が問題となっている。北極海航路には、地球温暖化に伴う北極海氷の融解によって通航できる期間が長くなったこともあり世界的な関心が高まっているものの、通航国とロシアの間で対立が生じている。国連海洋法条約(UNCLOS)第234条は、氷に覆われた排他的経済水域(EEZ)内で、船舶による海洋汚染の防止を目的とした法令の制定・執行の権限を沿岸国に認めている。ロシアがこの条約に基づき厳格な航行規則を制定しているのが、対立の理由だ。1996年、北極圏の様々な問題に対処するために、ロシア、アメリカ、カナダ、フィンランドなど北極沿岸8カ国で構成される北極評議会が設立された。日本は、北極海をめぐる権益獲得や国際的ルール作りに積極的に関与できるとしてオブザーバーとして加盟申請しており、2013年5月、中国、韓国、インドなどとともに承認された。