欧州連合(EU)は冷戦終焉(しゅうえん)時の12カ国から2007年には27カ国へと大幅に拡大した。これに伴い、複雑化したEUの構成を整理し、加盟国の主権を部分的に制限する意思決定方式を導入した欧州憲法条約(→「ヨーロッパ憲法」)が04年10月に署名された。しかしこの条約は翌年のフランス、オランダでの国民投票で批准に失敗し、頓挫(とんざ)した。そこで欧州憲法条約の一部を引き継ぎ、超国家的側面を除いたリスボン条約が07年12月に署名された。09年10月のアイルランドでの国民投票で各国の批准は終わり、最後にチェコのクラウス大統領が署名して同年12月リスボン条約は発効した。リスボン条約では任期2年半の欧州理事会議長や外務・安全保障政策上級代表の設置、欧州議会の権限拡大や欧州連合理事会での表決方式の修正などが盛り込まれたが、概して既存の体制の部分的修正にとどまったといえる。同条約はEUの構成を整理した点では一定の意義をもち、09年11月には初代議長としてベルギーのヘルマン・ファンロンパウ首相が、また外務・安保上級代表にイギリスのキャサリン・アシュトンが決まった。しかし、半年任期の欧州理事会議長国と欧州理事会議長との権限関係や各国外相と上級代表の関係など、多くは不明瞭であり、今後の運用を通じて決まると見られる点も多く残されている。