2012年の日韓関係を象徴するのは8月10日の李明博(イ・ミョンバク)大統領の竹島上陸に端を発する、領土問題をめぐる緊張激化という状況であった。しかし、その背景にあるのは、従軍慰安婦問題をめぐる日韓交渉の不調とその波及効果としての日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の締結直前のキャンセルなどに象徴されるような、日韓間の不信の増大であった。日本にとっての竹島をめぐる領土問題は、韓国にとっては日本帝国主義の侵略の象徴としての独島編入であるだけに、きわめて歴史問題である。こうした日韓間に横たわっていた歴史認識をめぐる軋轢(あつれき)が、領土問題やその他の問題領域において一挙に爆発した状況であった。その意味で、歴史認識をめぐる軋轢を管理せずに放置した状況下の日韓関係が、いかに限界を抱えるものであったのかを示した年でもあった。しかし、それだけでなく、10年を境にGDPにおいて日中が逆転し、中国の経済大国化とともに、領土問題などをめぐる中国と周辺諸国との摩擦も激化した状況下、日韓は、共有する対米同盟関係をいかに効率的に管理し、中国に対応していくのかに関する共通の問題への対応を迫られた年でもあった。12月には日本での安倍晋三自民党政権誕生、韓国での朴槿恵(パク・クネ)の大統領当選によって、13年の日韓関係は双方ともに新たな政権による仕切り直しが求められる。