1987年の憲法改正により、韓国では、違憲立法審査を専門とする憲法裁判所が新設された。これは、最高裁判所に違憲立法審査権を認める日本の裁判制度とは異なり、ドイツなどの制度を参考にしたものである。憲法裁判所裁判官は9人で構成され、大統領、国会、最高裁判所がそれぞれ3人ずつを選出し、任期は6年となる。違憲立法審査の他、大統領弾劾訴追、政党解散、国家機関間・中央政府と地方政府間・地方政府間の紛争など、非常に政治的な問題を管轄する。違憲判決などには過半数ではなく6人の一致が必要となる。2004年5月、当時の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領に対する国会の弾劾訴追を棄却したり、同年10月、盧武鉉政権下、ソウルから世宗市への首都移転計画に対して、ソウルに首都を置くというのは慣習憲法であり、首都移転のためには、憲法改正と同様、国会議員の3分の2以上の同意が必要であるにもかかわらず、そうした手続きを踏まなかったため違反であるという判決を下したりするなど、結果として非常に重要な政治的役割を果たしてきた。最近では、11年8月、従軍慰安婦に対する補償問題に関して日本政府との間で交渉を行わない不作為は違憲だという判決を下して、従軍慰安婦問題をめぐる日韓関係に一石を投じた。