前任の朴槿恵(パク・クネ)韓国大統領の罷免によって後任を選ぶために行われた2017年5月9日の大統領補欠選挙で、「トブロ(共に)民主党」文在寅(ムン・ジェイン)候補が当選し、9年ぶりに保守に代わってリベラル政権が成立した。文在寅は弁護士出身で、盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の片腕として大統領秘書室長などを歴任した。12年12月の大統領選挙では朴槿恵候補に惜敗したが、捲土重来を果たしたことになる。選挙の最中から「積弊清算」を掲げ、李明博(イ・ミョンバク)・朴槿恵という保守政権9年がもたらした政治腐敗を摘出することを優先的に行っている。また、若年層の失業などを解消するために公共部門の拡大などを掲げる。さらに、対北朝鮮政策に関しても、北朝鮮の核ミサイル問題や米朝関係の改善という条件付きではあるが、南北関係を進展させることで、従来は北朝鮮の核ミサイル開発に起因して米朝関係を軸に展開されがちであった朝鮮半島情勢における韓国の主導権の回復をねらい(韓国の「朝鮮半島運転者論」)、そのために平昌(ピョンチャン)オリンピックへの北朝鮮の参加を誘導した。その過程で、南北の特使交換、韓国特使の訪米が行われ、北朝鮮が軍事的脅威の解消と体制の安全保証という条件付きではあるが非核化への意思を明確にし、結果として、18年4月末に3度目の南北首脳会談、5月には史上初めての米朝首脳会談をそれぞれ開催することに合意し、文政権は米朝の仲介者としての役割を果たす。米朝交渉がうまくいけばよいが、それが挫折して再び緊張が高まると政権は困難な状況に陥ることも予想される。また、大統領任期の4年重任制(2期まで)への改正(現在は5年1期のみ)や大統領の権限縮小などを争点とする憲法改正を進め、大統領発議という形で法案を提出した。しかし、国会での3分の2以上の賛成を獲得する必要があり、少数与党という状況で、そうした課題が実現されるのかどうか注目される。