中国の従来の外交は、大国(極)間における調整、パートナー形成と二国間交渉が主であった。しかし近年、「大国外交」を意識するようになり、多方面にわたる積極的な外交展開が目立っている。一つは国際会議への積極的参加である。例えば、2005年秋の国連総会では、胡錦濤国家主席は人類が目指すべき国際社会として「和諧世界」の建設を提起した。あるいは北朝鮮の核問題で6者協議を主催し、北東アジア安全保障での重要な役割を果たしている。これらは近年の「責任ある大国」意識の高まりと関連する。二つには、アジア地域協力外交の積極的な展開である。ASEAN(東南アジア諸国連合)とのパートナーシップ、上海協力機構設立など従来にない地域協力関係の強化に乗り出している。三つには、エネルギー資源外交の推進である。すでに世界第1位のエネルギー消費国になった中国は、持続的な高度経済成長に伴って、さらにエネルギー需要を増している。しかも安全保障の観点から多角的な資源供給を目指し、中東の石油ルート確保のほかに、中央アジア、ロシア、東シナ海、南シナ海一帯の天然ガス、石油資源の確保・開発に熱心で、03年の中国の対外投資(約60億ドル)中、約半分がエネルギー関係であった。その他、近年注目されているのは、アフリカに対する積極的な外交展開である。06年11月には中国・アフリカ48カ国が北京に集まり第3回中国アフリカ協力フォーラム首脳会議が開かれた。そこでは中国によるインフラ建設、農業技術・人的支援、エネルギー開発協力、直接投資などこれまで以上に関係を緊密にしていくことが強調された。さらに、近年のすう勢として多角化外交に加え、「海洋権益」や「核心的利益」を強調することによって、中国の国益を前面に押し出す、積極外交も目立つようになっている。09年末の中国指導部会議で、従来の「トウ小平外交原則」とも言われる「韜光養晦」(目立たぬようにして力を醸成する)外交から「積極有所作為」(なすべきことを積極的になす)方針に転換したとも言われる。