南部ミンダナオ島でイスラム国家の分離・独立を求めて武装闘争を続けてきたフィリピン最大のイスラム武装組織。1978年に結成された。モロとはフィリピンのイスラム教徒の呼称。人口の84%をカトリック教徒が占めるフィリピンで、イスラム教徒は約5%だが、ミンダナオ島とスールー諸島では多数派になる。フィリピン政府とはいったん停戦合意したが、2008年に土地問題をめぐり衝突が再燃。10年に和平交渉が再開され、12年10月、アキノ政権と自治政府(バンサモロ政府)発足に向けて「バンサモロ枠組み合意」に達し、14年3月、「包括和平合意」に調印した。これに先立つ11年8月に、日本政府の仲介で、ベニグノ・アキノ大統領(→「ベニグノ・アキノ政権(フィリピン)」)とアル・ハジ・ムラド・イブラヒムMILF議長が来日して秘密会談を行ったことが、和平に貢献したとされる。合意では、政府、MILF、国際機関からなる移行委員会を設立して自治政府の権限など具体的な法令を決め、16年に自治政府が発足する予定だ。しかし、15年1月、通告なしにMILF支配領域に侵入した国家警察特殊部隊とMILFが衝突したり、和平に反発するモロ民族解放戦線(MNLF)や、MILFの分派バンサモロ・イスラム自由戦士(BIFF)などの武装勢力が地域内の村を襲撃したりと、不安材料も残る。アキノ大統領の任期は16年6月で終わるが、バンサモロ基本法案は大幅な自治権付与に対する反発もあって国会審議が大幅に遅れ、大統領選挙前の法案成立は困難になった。