イスラム系住民が多数を占めるフィリピン南部ミンダナオ島や南西部スールー諸島などでイスラム国家の分離独立を求めて1970年代に武装闘争を展開した組織。「モロ」とはフィリピンの公用語タガログ語でイスラム教徒を意味する。76年に政府と停戦協定を結んだが、不満を持つグループが78年に別の武装組織モロ・イスラム解放戦線(MILF)を設立。一部はより過激なテロ組織アブ・サヤフに合流した。96年の和平協定(ジャカルタ協定)締結によりMNLFは武装解除。創設当時から議長だったヌル・ミスアリがムスリム・ミンダナオ自治地域(ARMM)の知事並びに南部フィリピン和平開発委員会の議長に就任した。しかし、内部対立により2001年にミスアリは名誉議長に追いやられ、さらにARMM知事選でもフィリピン政府が副議長のバルク・フシンを支援したため実権を失った。これをきっかけにミスアリ派はスールー州ホロで武装蜂起したが鎮圧され、ミスアリも反乱罪で拘束された。08年にミスアリは釈放されたが、12年に政府とMILFとの間で「和平枠組み合意」が結ばれると、これに反発するミスアリ派が13年9月にミンダナオ島南部の商業都市サンボアンガ及び周辺集落を占拠したが国軍に制圧され、組織は大きな打撃をこうむった。ミスアリは、16年10月にロドリゴ・ドゥテルテ新大統領(→「ドゥテルテ政権」)と会談して新政権への協力を約束した。