難航していた環太平洋経済連携協定(TPP)をめぐる交渉が2015年10月に妥結したことで、東南アジア諸国からも参加を表明する国が相次いでいる。TPP参加12カ国(アメリカ、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム)が11月にマニラで首脳会議を開いた機会に、フィリピンのアキノ大統領(→「ベニグノ・アキノ政権」)はアメリカのオバマ大統領に「加盟を支援してほしい」と表明した。同じASEAN加盟国のマレーシアやベトナムがTPPに参加する中、フィリピンが不参加のままでは不利になると判断したためと見られる。インドネシアのジョコ大統領(→「ジョコ政権」)も、TPP交渉妥結の直後にTPP参加の意向を表明した。貿易と投資の自由化や知的財産権の保護など高いハードルを設定するTPPに対し、資源大国のインドネシアは様子を見る姿勢だったが、方針を変更した。韓国も参加の意向を表明。日本企業などの生産拠点が集まるタイも、TPP参加を前向きに検討する姿勢を見せている。だが、中国はアメリカ主導のTPPが先行することに警戒を示しており、ロシアも中国に同調している。米中両国が貿易・投資・金融のルールづくりで主導権争いを繰り広げる中、ASEAN諸国には両にらみの状況が続きそうだ。