政党政治の混乱が続いたタイで、2014年5月22日、プラユット・チャンオチャ陸軍司令官がクーデターで掌握した政権。タクシン・シナワット元首相(→「タクシン派」)の妹であるインラック・シナワット首相(→「インラック政権」)の退陣を求めた反タクシン派は、14年1月から首都バンコクの街頭を占拠して封鎖。混乱の中で首相は非常事態を宣言し、2月2日に総選挙を行ったが、反タクシン派の妨害により全国の2割で実施できなかった。同年5月には憲法裁判所が、11年にインラック首相の行った人事に対し、職権乱用として違憲判決を下し、同首相は失職した。こうした混乱を受けて、プラユット司令官は5月20日、全土に戒厳令を布告。両派の協議をうながしたが、不調に終わると「治安維持」を名目にクーデターを宣言。軍と警察からなる国家平和秩序評議会(National Council for Peace and Order ; NCPO)を設置して自ら議長となり、7月に暫定憲法を制定した。翌8月には、国王の任命を受けて正式に首相に就任。多くの軍人が閣僚を兼ねる暫定政権を発足させた。プラユット政権は、「国民和解」を最優先課題に掲げ、政治改革などを目指す国家改革評議会(National Reform Council ; NRC)を設置。総選挙による民政復帰への道筋も示しているが、15年中に実施されるはずだった総選挙は16年以降にずれ込んだ。