ブッシュ大統領(当時)が2002年9月に発表した報告書「アメリカ国家安全保障戦略(National Security Strategy of the United States of America)」に集大成された安全保障政策。アメリカと世界が直面する最大の脅威は、大量破壊兵器(WMD)を開発している「ならず者国家」(→「テロ支援国家」)や、大量破壊兵器の保有を企てる国際テロ組織であるとして、必要な場合には自衛権を行使して先制攻撃や単独軍事行動を辞さないというもので、イラク戦争で初めて適用された。ブッシュ・ドクトリンは歴代政権が明言を避けてきた先制攻撃容認を国家戦略として正式に認知したもので、冷戦時代以来の戦略転換を意味する。ホワイトハウスが06年3月に発表した「アメリカ国家安全保障戦略」の改訂版は、テロと大量破壊兵器の脅威に対して先制攻撃する戦略(ブッシュ・ドクトリン)を堅持するとしたうえで、世界の圧制の終焉を究極目標に掲げている。イランと北朝鮮の核開発問題については、それぞれ「重大な脅威」「核不拡散体制への深刻な挑戦」と指摘、特にイランについては単一国家としてアメリカの最大の脅威となる可能性があると位置づけた。