ラウル・カストロ国家評議会議長を首班とするキューバの現政権。2006年7月、フィデル・カストロ国家評議会議長は、病のため共産党・革命軍・国家評議会の最高権限を、第2の地位にあったラウル・カストロ国家評議会第1副議長兼国防相に委譲した。その後、08年2月に引退を表明し、直後の国会(人民権力全国会議)でラウル・カストロが後任に選出された。今日のキューバの最大の課題は、限界が明らかになったキューバ固有の「平等主義体制」の転換にある。改革はフィデル・カストロ前政権下でも進められたが、経済的社会的弱者への配慮から抜本的な転換には踏み切れなかった。そのためにむしろ経済情勢が悪化した。これを受けてラウル・カストロ政権下の11年4月、第6回共産党大会において新しい制度の基本理念や政策が決定され、本格的な体制転換に向けて動きだした。同政権は、ホセ・ラモン・マチャド国家評議会副議長など反バティスタ独裁闘争に参加した「革命世代」が中軸を占めるが、その役割は、国民生活の維持と自立的発展という革命理念を維持しつつ新体制への転換を確実なものにすることにある。その基盤が確立した段階で「革命後世代」にキューバの将来を託すことになる。