ラファエル・コレア大統領を首班とするエクアドルの現政権(2007年~現在)。コレアは経済学博士であり、パラシオ前政権(05~07年)の経済財務相を務めたが、新自由主義政策に反対し4カ月で辞任した。06年11月の決選投票で左派連合(民族同盟〈Alianza PAIS〉と左翼拡大戦線〈PS-FA〉)の支持を得て56.7%の得票で当選した。09年4月の選挙では単独で得票率51.7%を獲得し再選された。エクアドルは1979年の民政移管後も少数支配層中心の政治経済構造は変わらず、政情不安が続いた。90年代末には歴史的といわれる経済危機に見舞われ、2000年には通貨をスクレから米ドルに換えるドル化政策も導入された。先住民の全国組織CONAIEも加わり、コレア政権下の09年10月に制定された新憲法では、新自由主義体制の転換がうたわれたほか、エクアドルは複数民族国家であると規定され、様々な民族の組織、文化、言語、習慣などの固有性の維持、政治参加の権利等が認められた。しかし、石油等の自然資源開発を重視するコレア政権と自然保護を訴える先住民との対立が深まり、CONAIEは政権と決裂した。一方、新憲法では外国軍事基地の国内設置が禁止されており、09年9月に太平洋岸のマンタ米軍基地が閉鎖された。同基地は1999年にアメリカとの協定により麻薬対策基地として設置されたが、エクアドルではコカインの原料であるコカ栽培はほとんど行われておらず、隣国コロンビアのゲリラ組織コロンビア革命軍(FARC)の鎮圧のための拠点となっていた。2008年3月にはコロンビア軍がエクアドル領内のFARC基地を空爆したため、エクアドルはコロンビアと断交した(10年10月に完全復交)。