ラテンアメリカ、特に南米では、ほとんどの諸国が1960~70年代に軍事政権の支配下に入ったが、83年にはアルゼンチン、85年にはブラジルとウルグアイというふうに、80年代半ばころから次々と民政に移管した。最後まで残っていたチリのピノチェト政権も90年には終焉した。そのため、80年代半ば以降の時代は「民主化の時代」と呼ばれている。しかし、いずれの国でも軍部の影響力が残るなかで選挙が実施されたために、軍事政権下で制定された憲法の改正は実現できず、人権制限の撤廃、大量虐殺など人権侵害行為を行った軍人の裁判もほとんどなされなかった。また、軍事政権崩壊の大きな要因のひとつに対外開放経済政策のもとでの経済情勢の悪化があったが、民政移管後も保守派が政権を握ったため、経済政策は転換されなかった。加えて、対外債務の累積のため国際通貨基金(IMF)の指導のもとで緊縮財政政策が推進され、90年代以降も構造調整政策、すなわち経済自由化政策が加速化された。しかし、21世紀に入ると、ベネズエラのチャベス政権を始め、新自由主義政策からの転換を掲げる多くの政権が誕生し、人権侵害犯罪を起こした軍人の処罰なども進んでいる。