2008年8月に成立したパラグアイの現政権。フェルナンド・ルゴ大統領は同国で最も貧しいといわれるイタプア県のサンペドロ教区の解放の神学を信奉する司祭であった。憲法では聖職者の大統領や副大統領への就任が禁止されているため、08年4月の選挙では聖職を離脱して「変革のための愛国運動」の候補者として出馬し、42%の得票で当選した。パラグアイでは1954年からストロエスネル将軍の独裁政権が続いていたが、89年にクーデターにより崩壊した。しかし、その後も二大保守政党の共和民族連合(コロラド党)と自由党(現「真性急進自由党」)の支配が続いた。国民は貧しく、とくに農村ではインフラ整備も遅れている。ルゴ大統領就任後の09年12月には貧困層に対する医療の無償化法案が採択されるなど社会的弱者対策はやや進展した。しかし、可耕地の85%を全土地所有者のわずか2.5%の大地主が独占しており、農民の土地占拠活動が激化しているが、土地改革など本格的な社会改革は実施されていない。支持母体からは経済界との協調姿勢を批判する声も出ている。