ロシア産の天然ガスを欧州諸国に供給する新規パイプライン。北方(ノルド)ストリームはフィンランドとの国境に近い起点ビボルグからバルト海の海底を通過しドイツへと至るルート。バルト諸国やポーランドは海洋汚染を懸念して建設・稼働に反対であったが、2011年11月には稼働開始。年間550億立方メートルの輸送を目指す。また、南方(サウス)ストリームは黒海の海底を通りブルガリアからオーストリア、スロベニア、イタリアなどへ至るルートで、12年12月に着工。だが、ウクライナ危機後の欧州諸国との関係悪化を受けて14年2月に工事は中断されている。この代替案として「トルコ・ストリーム」が計画されている。ロシアはパイプラインによる資源供給で隣国ウクライナと対立し、これまでもたびたび同国経由の欧州向けガス供給が滞る事態が生じていた。これら新規のパイプラインは、いずれもウクライナを迂回(うかい)することでより安定的なガス供給をもたらすことが期待されている。他方、トルコから欧州連合(EU)諸国へ天然ガスを供給するナブッコ・パイプラインが、ロシアを経由しない形で計画されており、南方ストリームやトルコ・ストリームとの競合が予想される。