ウクライナのヤヌコーヴィチ(ヤヌコビッチ)政権とそれに反抗する諸勢力との対立に端を発した政治変動にロシアが事実上の軍事介入を行ったことで生じた、国家分裂や国家間の軍事衝突の可能性を秘めた政治危機。2014年2月下旬の政変後、ウクライナ領内のクリミア自治共和国にロシア軍主体とみられる「自衛部隊」が出現し、幹線道路や空港、行政施設を管理下に置いた。プーチン・ロシア大統領は、ロシア系住民保護のためとしてこれを正当化した。首都キエフの暫定政権は、クリミアにおけるロシアの実効支配や国境周辺での軍事演習などの挑発を踏まえ、臨戦態勢をとりつつある。欧米諸国を筆頭とする国際社会は、ロシアの行動を武力による現状変更を促すものとして激しく非難。3月6日、オバマ・アメリカ大統領は今回の危機を助長した個人・団体のアメリカへの渡航禁止や資産凍結を含む対ロシア制裁を指示した。クリミアのロシア帰属を問う住民投票の実施後には、さらなる制裁が科される見込み。今回の危機は、冷戦期以来構築されてきたヨーロッパの安全保障体制が機能不全に陥っていることを如実に示しており、既存の国際秩序の変更を含め地球規模の政治・経済的な悪影響を及ぼす事件となるおそれがある。(→「エブロマイダン(ウクライナ)」)