2003年12月の欧州理事会で採択されたもので、欧州連合(EU)の安全保障上の脅威とそれに対する政策対応を簡潔にまとめた文書。文書の正式名称は「よりよき世界における安全なヨーロッパ」。ソラナ共通外交・安全保障(CFSP)上級代表の作成による、初の欧州安全保障・防衛政策(ESDP)方針といえる。構成と内容は以下の通り。(1)安全保障環境、(2)戦略目標、(3)EUの政策。(1)加盟国に対する大規模侵略はありそうもない。代わりにヨーロッパが直面する新しい脅威はより多様でより見えにくく予見しがたい。具体的な脅威としてテロリズム、大量破壊兵器の拡散、地域紛争、国家破綻、組織犯罪があげられる。(2)冷戦期の脅威と異なり、これら新しい脅威には純軍事的手段だけで対処することはできず、複合的な対処が必要である。EUの戦略目標としては、こうした脅威への直接対処のほか、隣接地域安定化、有効な多国間システムの形成があげられる。(3)これまでの努力を多としながらも、EUはこれからもより積極的に、能力を向上させ、またアメリカをはじめとするパートナーと協力して脅威に対処すべきである。