欧州連合(EU)の目指す共通の防衛政策のこと。1992年のマーストリヒト条約で具体化に動き出した共通外交・安全保障政策(CFSP)の構成要素である。ヨーロッパ独自の防衛構想であるため、アメリカ側の警戒感を呼び、進展は遅かった。しかし、旧ユーゴ紛争で独自の対処ができなかったことへの反省と、これまで欧州防衛構想に懐疑的であったイギリスが政策転換したこと(98年サンマロ合意)で、その形成にはずみがついた。99年6月、EUは平和維持や危機管理などのペータースブルク任務(→「西欧同盟(WEU)」)をESDPの核に据え、EUがその遂行能力をもつとする方針を決定した。さらに、その達成目標(ヘッドライン・ゴール)が決定され、2000年末にはWEUの危機管理機能の吸収、常設の政治・軍事機構の創設が決められた。EU主導の作戦に北大西洋条約機構(NATO)の軍事能力を使用するための枠組み(ベルリン・プラス)も、03年3月までに確立した。ESDPには文民ミッションと軍事ミッションがあるが、EUは03年1月から、ボスニア・ヘルツェゴビナで前者の警察ミッションを開始し、04年12月には同国でのNATOの軍事作戦を引き継いでいる。08年12月の欧州理事会はESDP能力をさらに強化する旨の宣言を採択している。