欧州連合(EU)の隣接地域への政策。EU拡大の恩恵を新隣接国と共有することによって、EUの外縁の安定化を図ろうとしたもの。隣接地域の安定化は、欧州安全保障戦略(ESS)の戦略目標の一つともなっている。2004年に25カ国に拡大するに当たって、新たにEUと隣接することになる地域との関係を考慮して、03年に「より広い欧州(ワイダー・ヨーロッパ)」政策が提起された。04年、これが戦略文書や対象国との行動計画が発表される過程でENPと呼ばれるようになった。対象国は旧ソ連6カ国と、地中海の東岸と南岸のすべての国(9カ国)とパレスチナ自治区である。EU加盟候補国やその可能性のある西バルカン諸国は含まれていない。法の支配等、共通の価値観に基づいた改革を進めることを条件に、広範な経済・技術支援をして、地域の安定化を図ろうという狙いがある。EU拡大に当たって、同様の手法が大きな成果をあげ、対象地域の安定化に寄与した。しかし、ENPにEU加盟が視野に入れられているわけではないので、懐疑的な向きもある。最大の隣国ロシアに関しては、ENPとは別の戦略的パートナーシップの枠組みで、四つの共通圏創設プログラムがあるが、進展はあまりない。