欧州議会(ヨーロッパ議会)は欧州連合(EU)の立法機関に相当し、議員は加盟28カ国での直接選挙で選出される。欧州議会は欧州理事会(首脳会議)と並ぶ立法機関として位置づけられているが、法案の提出権は持たないために、その活動には一定の制約が伴う。議会はフランスのストラスブールに置かれている。欧州議会選挙は1979年に第1回選挙が行われて以来、5年ごとに行われる。2014年5月22日から25日にかけて実施された第8回選挙から、09年に発効したリスボン条約に基づき欧州議会のいくつかの制度が改正され、なかでも議員定数が従来の766議席から751議席に削減されることとなった。今回の選挙は、08年のリーマン・ショックに端を発した世界的な経済危機に直面し、深刻な債務危機に陥ったギリシャをはじめとする南欧諸国の救済にEUが全力を投入するなかで実施された。この過程でEU諸国間のユーロ危機解決をめぐる意見の対立が露呈され、論争が続くなかでの選挙であっただけに、世界からその結果に注目が集まった。13年7月に加盟したクロアチアを含む28の加盟国で実施された選挙は、EU統合に懐疑的な右派政党グループ(EU懐疑派)が躍進したのに対して、欧州統合の推進派である欧州人民党グループが53議席を減らすなど、EU統合に積極的なグループの退潮を示し、選挙前の大方の予想を裏切らない結果に終わった。なかでも、移民排斥や反EUを旗印に掲げる極右政党やポピュリズム政党が躍進したことに注目しなければならない。とくにマリーヌ・ルペン党首が率いるフランスの極右政党・国民戦線(FN)が24議席を獲得し、サルコジ前大統領の出身政党である民衆運動連合(UMP)やオランド大統領の率いる社会党を得票率で大きく引き離す躍進ぶりを発揮したのは、その端的な例である。ほかにも反EUを掲げるイギリス独立党(UKIP)、ギリシャの急進左派連合やデンマーク人民党がそれぞれの国で第一党となったのは、EU域内で急速に浸透しつつあるEU統合への懐疑的な市民感情や反移民感情がいかに根強いものであるかを示している。しかし統合推進派は議席数を減らしたものの、極右勢力などの反統合派の獲得議席数を上回って過半数を維持しており、欧州議会内部での多数派を形成し続けることに変わりはない。