イタリアのポピュリズム政党。イタリア語の語順でM5Sとも略される。2009年、人気コメディアンのベッペ・グリッロと、企業家、政治運動家のジャンロベルト・カザレッジョ(16年4月に死去)が結党した。五つ星の意味は、社会が守るべきものとしての「水資源(public water)、持続可能な発展(sustainable development) 、持続可能な交通(sustainable transport)、環境主義(environmentalism)、インターネットへのアクセス権(right to Internet access)」。実際、グリッロは1990年代から環境問題や政治問題をネタにする芸人であった。2008年のリーマンショック、翌年始まるユーロ危機を経て、11年就任のモンティ政権が財政再建のための大規模緊縮財政政策を実施したことで、経済格差が生まれた。五つ星運動は雇用不安や増税など、ここで生じた中・下流層のさまざまな不満を吸収し、急速に党勢を伸ばした。12年の統一地方選挙ではパルマ、ミーラ、コマッキオの市長ら地方自治体の首長4人を当選させ、13年の総選挙では第2党(単独政党としては第1党)に躍進。14年の欧州議会選挙でも、17人が当選した。さらに16年の市長選挙では、ローマとトリノという2大都市で、いずれも30代の女性候補を圧勝させている。17年は総選挙の可能性が高まり、現行選挙制度の下で政権を握る可能性も出てきた。彼らの姿勢には必ずしも大衆迎合だけとは言えない、政治浄化のまじめな取り組みもあるが、他方で、ユーロ離脱(EUには残留)の国民投票実施を掲げている点が、EU各国の不安を煽っている。