ローマ法王フランシスコとロシア正教会のキリル総主教の初会談のこと。2016年2月12日、キューバの首都ハバナの空港で約2時間の会談が行われた。カトリックと東方正教会は1054年に分裂したが、カトリック教会の頂点にいるローマ法王と、東方教会最大の勢力であるロシア正教会のトップが会談するのはそれ以来初めてのこと。会談は両者の和解に向けて歴史的な一歩と評価されている。東西冷戦期、ローマ法王庁は反共主義の総本山的位置にあり、逆にソ連は無神論が建前で正教会は弾圧されていたが、1991年のソ連崩壊で、両教会に融和の機運が生まれかけた。しかし、ロシア正教会側が、旧ソ連諸国におけるカトリックの宣教活動に反発して関係改善は進まなかった。今回は約2年の秘密裏の交渉を経た上での実現となった。過激派組織「イスラム国」(IS)によるキリスト教徒迫害が、両者の接近を促したと言われる。発表された共同宣言では、中東からのキリスト教徒の「追放」を止め、テロや暴力の終結のための努力、対話を通じた平和などが呼びかけられている。しかし、ロシア総主教庁からの独立を主張しているウクライナ総主教庁やウクライナ東方カトリック教会は、バチカンに裏切られたと反発している。また、エコノミスト誌は、会談は法王フランシスコを地政学に引き込んで、ウクライナに軍事介入するロシアを「容赦」させたロシア政府(ウラジーミル・プーチン大統領)の外交的勝利だとしている。