シーア派とは第4代カリフのアリーを支持する人々で、661年にアリーがクーファで刺殺され、その遺体がナジャフに埋葬された(アリー廟)ため、同地が聖地としてシーア派の中心地となった。イラクのシーア派には、ハーキム家、サドル家、ホイ家など数世代にわたり著名なイスラム法学者を輩出してきた名家がある。2003年4月にナジャフで殺害されたアブドルアジズ・ホイ師(欧米の信頼度が高かった人物)や、同年8月にアリー廟で爆弾テロにあったムハンマド・バーキル・ハーキム師もその家系である。また、反米武装闘争を展開し、アリー廟に立てこもったムクタダ・サドル師も同様である。現在、イラクのシーア派は大アヤトラ(アヤトッラー)のアリー・シスタニ師が中心的存在であるが、同師はイスラム法学者の政治への関与には消極的である。シーア派の広がりは、レバノン山岳部地帯、メソポタミア地方、ペルシャ湾岸、イラン高原に及んでいる。この地域をシーア派三日月地帯として、シーア派連帯の動きを脅威と見る分析もあり、イラクのシーア派の動向が注目される。