2005年、サハラ砂漠周辺諸国(サヘル諸国)がテロリストの避難地や過激派の温床になることを防ぐために、アメリカによって打ち出された軍事・経済支援を中心とする多国間イニシアチブ。参加国は当面モロッコ、アルジェリア、チュニジア、モーリタニア、セネガル、マリ、ニジェール、チャド、ナイジェリアの9カ国。アメリカは01年の同時多発テロ以来、石油の中東依存から脱するため、ナイジェリア、赤道ギニア、アンゴラ、チャドなどアフリカ大西洋沿岸産油国への積極的外交を進める一方、テロリスト対策として紅海に面するアフリカの角地域およびサヘル地域を重視し、02年以来パン・サヘル・イニシアチブ(PSI ; Pan Sahel Initiative)と称する軍事訓練・支援を拡大してきた。さらに07年10月には、アメリカが、従来複数の地域別統合軍司令部によって管轄してきたアフリカ大陸について、新たな統合軍司令部としてアフリカ軍(AFRICOM)を発足。しかし、南アフリカなど、米軍の関与の深化を懸念する国もある。アメリカは、ソマリア内戦への多国籍軍投入によって自国の兵士に犠牲者を出した1993年以降、アフリカでの軍事力による直接介入に消極的になり、アフリカ諸国による平和維持活動の育成支援を中心とするようになった。2010年には、イスラム・マグレブ・アルカイダ(AQIM)と称する武装集団がフランス人などをサヘル諸国で誘拐する事件が頻発し、フランス政府も同地域でのモーリタニア軍との共同軍事作戦の実施などに踏み切った。