チュニジア共和国で2010~11年に起きたジャスミン革命後、多元的な民主主義構築に対して貢献を行った市民連合体のこと。ジャスミン革命とは、対外的には穏健な親欧米政策をとり、国内では警察国家体制で23年間君臨したベン・アリ独裁政権が、10年末の貧困青年の抗議焼身自殺事件をきっかけに大規模な民衆デモによって崩壊した民主化運動のことである。この運動はエジプト、リビア、シリア、イエメンに波及し、「アラブの春」とも呼ばれるアラブ世界の地殻変動の契機となった。11年10月に実施された憲法制定議会選挙では、イスラム色の強い政党が連立政権を発足させ、憲法制定体制へと移行する予定であった。しかしその後、野党の世俗派政治リーダーがイスラム武装勢力に相次いで暗殺され、深刻な政治危機に陥った。13年、この危機回避にチュニジア労働総同盟(UGTT)、チュニジア人権擁護連盟(LTDH)、チュニジア経団連(UTICA)、同国弁護士からなる全国法律家協会の4団体による政治勢力間の対話呼びかけが、決定的な役割を果たした。14年にはアラブ諸国はもとより、アフリカ諸国の中でも南アフリカ憲法と並んで最も民主的な憲法と評価された新憲法が制定され、新政権は軌道にのった。ラテン語の4にちなみ「カルテット」と呼ばれたこの市民連合体は、イスラム主義対世俗という対立を超えた寛容さによる政治対話促進活動が評価され、2015年のノーベル平和賞を受賞した。