2013年10月28日、ウイグル人一家3人の運転する小型四輪駆動車が中国・北京の天安門広場に突入し、炎上した事件。実行犯3人と観光客2人が死亡し、40人が負傷した。中国政府は「綿密に計画された組織的テロ」と断定し、新疆ウイグル自治区で5人の容疑者を逮捕。当局により国際テロ組織と指定されている東トルキスタン・イスラム運動の指示があったとの見方が報じられた。トルキスタン・イスラム党を名乗る組織により事件はムジャヒディン(聖戦に参加する戦士)によるジハードだったとの声明もなされた。その一方で、事件を起こした一家が09年7月の新疆ウイグル騒乱事件で家族を失っており、組織的テロというよりもその報復行為だったとの見方もある(→「新疆(しんきょう)ウイグル騒乱事件(2009年)」)。いずれにせよ、事件の背景には中国政府による新疆ウイグル自治区での漢化政策やウイグル文化の軽視、イスラムへの抑圧がある。このような政策に対するウイグル人の側からの不満が、警察当局への襲撃など暴力的な形で現れる事件が後を絶たず、13年には7月と12月に大規模な襲撃事件が自治区各地で発生している。同時に、このような事件が首都北京の中心部で起こったことは、中国の公安当局がウイグル人の不満を自治区内部だけに押しとどめることができなくなっていることを示唆する。