イギリス、カーディフ大学の教授P.ブラウンが1990年に提起した造語・概念。どういう教育を受けることができるか、どういう高校や大学に入学できるかといった教育機会・教育達成度や職業的・社会的地位や報酬が、個人(子ども)の努力と能力によって左右される社会の仕組みや規範をメリトクラシー(能力主義という意味に近い)というのに対して、特に教育達成度について、ペアレント(親・保護者)の教育への関心と積極的な教育支援(家庭や学校外での学習環境の整備充実や学校情報の収集・提供と助言など)によって左右される社会の仕組みや規範をペアレントクラシーという。イギリスでは80年代のサッチャー政権下での教育改革により、日本の学習指導要領に相当するナショナル・カリキュラム、その実施状況・学習到達度状況を調査するナショナル・アセスメント・テスト(共通学力テスト)やスクール・インスペクション(学校査察、学校評価)の制度が導入され、同テストと学校査察の結果がすべて学校別に公表されるようになった(イングランドとウェールズが中心で、スコットランドは異なる方式を採用)。その結果、学校の学力レベルや良しあしに対する関心が高まり、学校選択を行う保護者が増加し、教育機会・教育達成度が、家庭の階層的・経済的要因に加えて、家庭の文化的環境や保護者の積極的な教育支援に左右され、教育格差が拡大する傾向が強まったとして、提起された概念である。同様の傾向は日本でも、例えば「お受験」と言われる国立・私立の幼稚園や小中学校の受験に象徴されるように早くから見られたが、特に90年代以降、高校入試・大学入試の多様化や、学校週5日制の導入拡大、学校選択制の導入などを背景として目立つようになってきた。そのことは、例えば週刊誌や月刊誌などが、首都圏・関西圏の鉄道沿線別受験偏差値一覧や東京の学校選択制導入地域の人気度一覧の特集記事を載せるとか、親子で取り組む大学入試や有名大学受験の成功体験の特集記事を載せるといった事態にも象徴的に表れている。