憲法の条文を改正手続に則して変更することを憲法改正というのに対して、正式な改正手続をとらずに、政府の解釈によって憲法の内容を変えることを解釈改憲という。現行憲法の下で集団的自衛権を認めるなどがその典型である。すなわち日本政府は従来から、自衛隊を必要最小限度の実力と考えることで、自衛隊を合憲と解釈してきた。しかし、集団的自衛権は、自国が攻撃を受けていないのに自衛隊が実力を行使できる権利であり、それを認めれば、自衛隊が行使する実力は必要最小限度の範囲を超え、自衛隊を合憲と解釈する基礎が失われてしまう。そのような集団的自衛権を、もし政府解釈の変更だけで行うとすれば何らの民主的手続も経ずに憲法の規範内容が変更されてしまうのである。憲法は、権力を縛ることによって人権を保障するためのルールである(立憲主義)。解釈改憲は、正式の改正手続を経ずに、したがって十分な議論が行われないまま、政府権力の判断だけでいつの間にか憲法の規範内容が変えられてしまうものであり、立憲主義の基本思想をないがしろにするものである。それくらいならば、正面から憲法改正論議をすべきである。